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近年発見されたソルのギター曲。有名なブライアン・ジェファリ編纂のソル全集にも未収録。ソルの自筆譜がサザビーズのオークションに出品され、アメリカの古楽譜商が手に入れ、現在はギタリスト、ペペ・ロメロの所有となっている。その自筆譜に基づいて出版されたのが、本楽譜である。現存するソルのギター曲の自筆譜は、今のところこの1曲だけという貴重なもの。ササビーズには、この自筆譜とともに、ソルのサインをもつ印刷譜がまとまって出品されたという話だが詳細は不明である。またそれらコレクションの出所はイタリアということだが、由来などについては、出品者が匿名であるために知ることができないのは残念である。
さて、この曲の正確なタイトルは、「弟子ウゼ嬢に捧げるギター独奏のための幻想曲」。ウゼ嬢と聞けば、ソルの〈6つのワルツOp.39〉(1830年頃出版)〈幻想曲(二重奏)Op.54bis〉(1833年出版)を思い出す人もいるだろう。そう、その人ナタリー・ウゼ嬢のためにこの幻想曲は作曲された。さらに、このウゼ嬢はソルの弟子になる前に(1820年代末)、フランチェスコ・モリーノ(1775-1847)の弟子であったことが判明している。モリーノは当時のパリ・ギター界にあってカルッリと2分するほどの大物だった(「ギター教育界の」という但書きが必要かも知れない)。ウゼ嬢もモリーノの教則本の巻頭の図版に描かれている。しかし、ウゼ嬢はモリーノ門下を脱し、ソルの弟子となる。そして当時のソルはというとロシアからパリに移ったばかりだった。ということは、ソルの名声はパリに戻った後、短期間のうちに確立したことが窺える。(いかんいかんソルの話になってきた……)。
曲自体は、ソルの幻想曲の典型的なフォームである、序奏、主題と変奏、そして舞曲(通常はワルツだったりするが、この幻想曲では2拍子の舞曲)とる、大曲に属するもの。いつものソルと違うのは最後の舞曲。カルリのような脳天気さ、そして彼らイタリア派のギタリストらの曲のようにオクターヴのパッセージ、つまりイタリア風(またはオーケストラ風)の味わいが濃い。たしかに、これまで知られていたソルのギター作品(正確に言うと、この幻想曲以外の全作品)にはあまり見られない作風なのである。これらの特徴をもって、この幻想曲はソルが駄作としたもの、だから生前に出版されなかったのだ、という人もいる。しかし、待ってほしい。確かにソルのギター作品と比較すると「ソルらしくない」のは正しい。しかし、現存しているソルのバレエ曲の大半はそのような曲なのも事実である。こうは考えられないだろうか。ソルはギター曲を書く場合、ギターの特性を生かすことを優先し、相応しい(しかもソルの広い創作世界からいうと、「限定」といってもよい)ジャンルで作曲するのが常だった。しかし、(理由は不明ながら)この幻想曲(正確には最後の舞曲)は、ソルがギター曲作曲の枠を緩めた稀な例だと。
いずれにせよ、校訂者ペペ・ロメロの名演が示すように、ソルの“新しい名曲”である。
(後書き)上の紹介文のなかで、この幻想曲が「ソルらしくない」かどうかについて書き過ぎたようだ。繰り返すが、この議論はあくまでも最後の2/4拍子の舞曲についてだけの議論であり、先行する序奏、変奏曲はまぎれもなく「ソルらしい」立派なものである。また、サザビーズに出品されたコレクションについても、ソルがウゼ嬢に与えた未出版の自筆譜を含んでいることから強く示唆されるよう、ウゼ嬢ゆかりのコレクションであると考えられる。
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